最澄と空海、二人の天才の波乱と盛衰の物語。
生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し
――弘法大師 空海『秘蔵法鑰』
「阿・吽」
作品紹介
作品情報
・タイトル:阿・吽
・作者 :おかざき真里
・ 発売日 : 2014/10/10 ~
あらすじ
舞台
平安時代初期、自らの無力に絶望するまだ無名の僧である最澄と、経典に学びを得ることができず苦悩する天才肌の荒くれ者空海。飢饉と人心の荒みを抱える時代、仏道に光を見出そうとした二人の高僧を描く。
概要
本作は真言宗開祖、弘法大師空海と天台宗開祖、伝教大師最澄の波乱の一生を描く作品です。
随所に二人の対比やそれぞれの功績について触れられていますが、二人が出会うことは数回しかありません。
二人の行動と偉業により時代が、日本が動いていく。しかし同時期に存在してしまった2つの極点は果たして本人に幸運をもたらしたのでしょうか。
既刊一覧
※1話無料で試し読みできます。
見どころ
画面から感じるものすごい熱量が見どころ!
熱い、とにかく熱い!
1ページずつが一つの作品であるかのような画面です。
正直言葉で説明できるたぐいの作品ではないのでとにかく1巻読んでみてください、というようなことしか言えないのですが、ページを開いた瞬間生ぬるい漫画ではないということが一目瞭然かと思います。
作者
作者は「おかざき真里」
単行本としては本作が17作めになります
代表作は『サプリ』『&』。
特に『サプリ』は月9ドラマになったこともあり、当時かなり話題になっていたのでご存じの方も多いのではないでしょうか
本作を読むと、『サプリ』の頃も女性向け漫画としては珍しい絵画的な画面表現が端々にあったことが思い出されます。本作のアオリでは「作者の新境地」とのことですが今にして思えばむしろこちらが作者の本来の土俵なのかもしれません。
前情報がないと「え、『サプリ』の人!?」となてしまうこと請け合いなほど作風は確かに新境地です。
亀齡で有名な岡崎酒造の杜氏、岡崎美都里さんは御親類だそうです。
ホームページ・SNS
過去の作品(別名義、読み切りを含む)
単行本
- マリーン(1988年)
- 冬虫夏草
- シャッターラブ
- BX
- バスルーム寓話(デビュー作)
- 彼女が死んじゃった。
- やわらかい殻
- セックスのあと男の子の汗はハチミツのにおいがする
- 12ヶ月
- サプリ
- 渋谷区円山町
- 銀になる
- サプリ Extra
- & -アンド-
- Girl's 寓話
- 友だち以上
- 阿・吽
- ずっと独身でいるつもり?
- かしましめし
読み切り
- 新ご出産!
- 私の結婚式!
- 祝ご出産!
- ハナマルご出産!
- ひねもす暦 ほのぼの家族の子育て日記。
※本作と『渋谷区円山町』『サプリ』『&』以外の作品は意外にも全2巻以下の短命作のようです。
作者のその他の作品紹介



感想
冒頭、幼少期の母との離別、青年となった最澄の目の前で知り合った女性が殺されるなど、作品の題材を考えると異様なほど殺伐とした展開が一話から繰り広げられます。
後に随所で最澄を襲うこれらの理不尽な体験が彼を絶望と悟りへと導くのですが、それらが思わず声を出してしまうような描写力で描かれています。
本作を読むと当時高校の教室で眠たく聞いていた日本史の人物が急に血の通った人間としてイメージできるようになるので、受験勉強の息抜きがてらにもいかがでしょうか。
筆者は当時読んでみたかったとちょっと思ってしまいました。
歴史に詳しくないためどの程度史実に忠実に描かれているのかはわかりませんが、巻末の大量の参考文献一覧を見るに誇張はあるにせよ大部分は史実を元にしているのではないかと思われます。
ネットの評判
- これは素晴らしい。色気かつ力強い筆致に気分良く酔い、心をわしづかみにされる
- 最澄と空海、二人の対比・ベクトルの向き方がが面白い。静と動、内と外、理性と狂気、平静と苛烈
- まず画が素晴らしい。そして、文字やことばから伝わる意味の分からん力が宿りこもったこの感じ
- ページを進めど進めど闇にしか思えないけどでも進みたくなる、光を求めたくなる。最後に光はあると信じている
- 色っぽい女性男性を描くことに定評のある方だと思うのですが、青年誌になっても変わらず坊主のおっさんから若い子まで匂い立つ色気を感じる
読書メーター
やはり苛烈なほどの熱量をぶつけられる作品。こういう稀有な作品は一読の価値ありです。
総評
この迫力は実際に手に取らないとわからない。
とにかく圧倒的なので「ここのエピソードちょっとな」とか、そういった感想に至りません。これはこういうものだというものすごい説得力があります。
興味のある方はぜひ一度読んでみていただければと思います。
作り込んでいるがゆえに密教や真言、サンスクリット、ウパニシャッド哲学など、知識要素の多い箇所は学ぶところもあるものの「これは何を言っているんだ…」となる部分もあります。どこまでついてこれるかな?という読者への挑戦でしょうか。
筆者は執筆時点で9巻までしか読めていないのですが、この度完結とのことで、時間を取ってぜひ最終巻まで一気読みしたいと思います!
関連情報
メディアミックス
本作のメディアミックスは現在ありません。
(ちょっと映像化というのはハードルが高そうですね…)
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